フォーレのレクイエム。モーツァルト、ブラームス、ヴェルディに次いで4大レクイエムと呼ばれる。レクイエムとは日本語で鎮魂歌と訳され、もともと死者の安息を祈る音楽のこと。安息とは死者が地獄ではなく天国に行けること。それが実現するには地上の生者の祈りが必要、それがレクイエム。

この曲はもちろんフォーレの代表曲で、むしろこの曲しかフォーレには無いと言っていいくらい。ただしこの曲はカラヤンとかバーンスタインはもちろん、ベームとかクライバーとかも録音していない。メジャーな曲では無いのかと言われればそんなことはもちろん無い。ソリストもいるし、合唱もいて編成もなかなか豪華。カラヤンだってバッハとか、ヴィヴァルディとかを演奏するのになぜもっとロマン派のフォーレを演奏しないのかはわからない。

おそらくは「フランス物」という括りだったのだろう。バッハやモーツアルトはインターナショナルだからアメリカ人でもフランス人でも演奏するというわけだ。

そのため名盤はクリュイタンス 、コルボ、ジャン・フルネ、ガーディナー、ヘレヴェッヘなどとなる。もちろん有名な指揮者だけど、ちょっとカラヤン路線とは違う。なぜか古楽演奏者が多い。

その中でいわゆるベルリンフィルに登場するような指揮者では小澤征爾、バレンボイム,ジュリーニなどの録音がある。今日は日本人として小澤征爾をきく。

ボストン交響楽団、タングルウッド音楽祭合唱団による1994年の録音
ソプラノ:バーバラ・ボニー バリトン:ホーカン・ハーゲゴール

小澤はもともとフランス音楽が得意だし、師匠である齋藤秀雄が死の間際に、この曲を葬式で流してくれと言ったという逸話があります。それにしてはもう一度くらい録音してくれてもいい気がしますが、この録音に満足しているのかな。やはりフォーレのレクイエムは売り上げが伸びない選曲なのか。

まず、バリトンのホーカン・ハーゲゴールが素晴らしい。歌曲集も同時に収録されているのですが、柔らかく、自然な声で聴く人を惹きつけます。ちなみにバレンボイム版はフィッシャー=ディースカウで、もちろんびっくり素晴らしいです。しかしこのCDでしか聞いたことのないこのバリトン歌手も本当に素晴らしい。

バーバラ・ボニーもいいのですが、特筆はできません。なぜならソプラノの歌う「ピエ・イエス」はクラシックの名曲のなかでも至宝ともいうべきものであり、少年が歌うバージョンを始め、名唱がひしめいているからです。ここでのボニーは少しスローに感じます。オペラはもちろん、シューベルトなども素晴らしい歌手なのですが。

小澤の音楽作りは「繊細で大胆」というもの。先に述べた古楽系の指揮者が繊細を追い求める一方、小澤はボストン交響楽団のロマン派の音楽作りを忘れません。ものすごい凝縮されたエネルギーがこちらに迫ってくるような音楽が繰り広げられます。

繊細で大胆と述べましたが、リタルダンドを多用してテンポに緩急が多く、あざといクレッシェンドがあるというわけでもありません。チョンミュンフンの一曲目のスーパーリタルダンドや、リベラメのティンパニのような思い入れは無いです。

2曲目OFFERTOIREのアーメンコーラスなど、リタルダンドせずに突っ込み、最後の音はかなり引き延ばす雰囲気でカッコよく決めています。師匠であるカラヤンの雰囲気をとても感じます。

あまり評価されることのないCDなのですが、繊細で大胆のバランスが割と好きで聞いています。コルボなどももちろん素晴らしいのですが、少し神聖で崇高すぎることに抵抗感が出てきました。かと言ってチャイコフスキーのように演奏されて欲しくもない。

初めて聴く人、またこれから演奏したいと考えている方に特にオススメします。クセが少ないですから。